日常生活で気をつけること1)
監修:オリンピア眼科病院 神前 あい 先生
伊藤病院 渡邊 奈津子 先生
伊藤病院 渡邊 奈津子 先生
禁煙はすべての患者さんで必須です
たばこを吸う人では甲状腺眼症の発症リスクが高いだけでなく、重症になりやすいことが報告されています。さらに、ステロイド薬や放射線治療による効果を弱めることも分かっているため、甲状腺眼症ではすべての患者さんで禁煙が強くすすめられます。
また、バセドウ病の患者さんでも、たばこは抗甲状腺薬の治療効果を弱めることが分かっているため、甲状腺眼症の有無にかかわらず禁煙がすすめられます。
たばこが甲状腺眼症を悪化させるメカニズムとして、たばこの成分が免疫反応を刺激することや、眼の奥の組織が低酸素状態になることで、眼球の周りの脂肪組織や筋肉の炎症が起こりやすくなったりすることが考えられています。
ストレスを避けて、規則正しい生活と十分な睡眠、安静を
精神的ストレスは、甲状腺眼症の重症度と関連することが報告されています。また、甲状腺眼症のさまざまな症状自体が精神的ストレスとなります。そのようなストレスは生活リズムを崩す原因となり、生活リズムが崩れるとさらに精神的に不安定となって症状が悪化するという悪循環に陥ります。そのため、できるだけストレスをためない生活を送ることが重要です。
たとえば、自分のペースで仕事を行い、余裕をもった生活と安静を心がけましょう。睡眠を十分にとり、規則正しい生活を送ることが大切です。
炎症が起こっている時期には、歯科処置や激しい運動は避けましょう
感染症は免疫反応を刺激し炎症を悪化させるため、そのリスクとなる抜歯などの処置は避けたほうがよいでしょう。ケガの原因となるような激しい運動も、同様の理由から避けたほうがよいと考えられます。
- 日本甲状腺学会・日本内分泌学会 編集: 甲状腺眼症診療の手引き メディカルレビュー社, 2020