どのような検査を行う?1)

監修:オリンピア眼科病院 神前 あい 先生
伊藤病院 渡邊 奈津子 先生
  

適切な治療を行うために、炎症の度合いや重症度を調べます

甲状腺の病気のある方で眼の症状が現れた場合は、眼科での診察や以下の検査を行い、甲状腺眼症の重症度や炎症の度合いを評価します。
診察
眼の圧迫感・違和感、眼を動かしたときの痛み、まぶたの赤み・腫れ、眼の充血、白目部分の腫れ、目頭の腫れの有無などを確認します。これらが3つ以上ある場合、炎症が起こっている(活動性あり)と判定されます。
MRI

眼の炎症の度合いや病変を確認するためにとても重要な検査です。磁場が発生しているトンネル状の装置に入り、眼の断面を撮像します。ただし、心臓ペースメーカーなど体内に金属が入っている方は検査を受けられない場合があり、代わりにCT検査を行うことがあります。

  
眼球突出度の計測
専用の計測器を用いて、目じりから黒目の頂点までの距離を測ります。その距離が15mm以上、または左右に2mm以上の差がある場合に異常と判定されます。
  
角膜検査
眼に光を当て、黒目部分の表面に傷がないかなどを調べます。
眼底検査

眼底鏡やカメラを用いて、眼の奥の網膜や視神経に異常が起こっていないかを調べます。

  
正常な眼の眼底写真

日本眼科医会
(https://www.gankaikai.or.jp/info/
funduscopy.pdf)(2024年7月閲覧)
Thyroid gland
圧迫性視神経症を起こした甲状
腺眼症の眼底写真

視神経乳頭部に浮腫と出血がみ
られます。

Slentz DH, et al. JAMA Ophthalmol.
2021; 139(2): 244-247.
眼球運動検査
正面、上下左右、斜めの9方向を見たときに、左右の眼の位置のずれや複視の症状がないかを確認します。
視力検査、色覚検査
甲状腺眼症では視力障害がゆっくり進行し、症状に気づきにくいことがあるため、定期的に視力や色覚の検査を行います。
眼圧検査
甲状腺眼症では眼の奥の組織が腫れることで眼圧が上昇することがあります。眼圧の上昇は視力障害につながるため、定期的に眼圧検査を行います。
また、まだ甲状腺の病気と診断されておらず、眼の症状から甲状腺の病気が疑われる場合は併せて血液検査を行い、甲状腺ホルモンの分泌異常や、自己免疫疾患の原因となる抗体がないかどうかを調べます。
  • 日本甲状腺学会・日本内分泌学会 編集: 甲状腺眼症診療の手引き メディカルレビュー社, 2020