甲状腺眼症診療を行っている施設の受診

監修:オリンピア眼科病院 神前 あい 先生
伊藤病院 渡邊 奈津子 先生
  

甲状腺眼症の診療を行っている施設を受診しましょう

甲状腺眼症は多くの場合、甲状腺の病気に関連して発症します。バセドウ病の患者さんでは、治療の必要のない軽い症状も含めて、25~50%で眼症を発症します1) 。約40%の患者さんはバセドウ病の発症時期に眼症状も発症しますが、バセドウ病などの発症から数年たって眼症が発症することもあるため2) 、甲状腺の病気のある方は、定期的に眼の症状をチェックすることがとても大切です。
ただし、甲状腺眼症は眼の周りの組織の免疫システムの異常によって起こることから、バセドウ病などの治療で甲状腺の機能が正常になっても、眼症の症状は改善されないことがあります。そのため、眼症に対してはその治療に詳しい施設での診療が必要となります3)。甲状腺眼症はまれな疾患です。治療ができる施設も限られていますので、内科担当医、眼科医に相談して治療可能な施設を紹介してもらってください。
  
甲状腺の病気のある方は、症状チェックなどで眼の異常に気づいたら、早めに普段甲状腺の病気の治療を受けている医師に相談し、甲状腺眼症診療施設を紹介してもらうとよいでしょう。
患者さんによっては、甲状腺の病気より先に眼症を発症することがあります2) 。また、甲状腺の機能に異常がないのに眼症を発症する方もいます1) 。このような場合、多くはまず眼科を受診し、ドライアイや疲れ目などとして様子をみられることも多いでしょう。治療を受けても症状が続く、疲れ目とは違う眼の違和感があるなどの場合は、顔をよく観察してみましょう。眼が大きくなってきた、まぶたが引きつるなどの変化があれば、甲状腺眼症の可能性があります。特に、甲状腺眼症の症状は朝に強くみられます。朝起きたときにまぶたが腫れている、物がダブって見えるなどの症状がある場合は、眼科の先生に症状を詳しく伝え、甲状腺眼症診療施設を紹介してもらいましょう。
  • 廣松雄治、他: 診断と治療 2023; 111(5): 623-627.
  • 日本甲状腺学会・日本内分泌学会 編集: 甲状腺眼症診療の手引き メディカルレビュー社, 2020.
  • 伊藤公一 監修: 患者のための最新医学 バセドウ病・橋本病 その他の甲状腺の病気 改訂版 高橋書店, 2020.